

「人前で何かをすることによって、悪い評価をされるのではないか・・・」「周囲から注目を浴びるようなことをして、恥ずかしい思いをしてしまうのではないか・・・」
例えば結婚式のスピーチを頼まれて、「ちょっと恥ずかしいな」と思うのは誰にでもあることですが、スピーチを頼まれた時から失敗して他人から馬鹿にされはしないかと考えプレッシャーを感じて苦しい日々を過ごしたり、マイクの前に立ったもののふるえが止まらず、声もうわずり、スピーチを続けられなくなってしまう。あるいは、友達の家に食事に招待されたものの、不適切な食事のマナーを指摘されるのではなどと気になって、顔が真っ赤にほてり、おいしい料理ものどを通らなくなってしまう。
このように、他人に悪い評価を受けることや、人目を浴びる行動への不安により強い苦痛を感じたり、身体症状が現れ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたすことを、社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)といいます。
この社会不安障害(SAD)は性格の問題ではなく、精神療法や薬物療法によって症状が改善することがある心の病です。ちょっと恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、社会不安障害(SAD)の人は、恥ずかしいと感じる場面では常に羞恥心や笑い者にされるのではという不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。
思春期前から成人早期にかけて発症することが多いこの病気は、慢性的になり、人前に出ることを恐れるようになると、「うつ病」等のさらなる精神疾患の引き金となることもあります。日本国内に推定で約300万人以上の患者さん*がいると言われており、現代社会では多くの患者さんを抱える一般的な病気です。この病気にかかるのは決して特別な人ではなく、現在も海外では多くの患者さんが医療機関での治療を受けています。
- * SADの生涯有病率3〜13%(American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders.Fourth Edition,American Psychiatric Association,Washington,D.C.,1994.より)に基づき、日本国総人口1.27億人(総務省統計局人口推計、平成15年10月1日分)より試算。
- ※SADの生涯有病率は他に、7〜13%(Furmark T.:Social Phobia:Overview of Community Surveys)、13.3%(Magee,W,J.,Eaton,W.W.,Wittchen,H.U.et al.:Agoraphobia,Simple Phobia,and Social Phobia in the National Comorbidity Survey)、10〜15%(Ballenger,J.C.,J.R.T.,Lecrubier,Y et al.:Consensus Statement on Social Anxiety Disorder from the International Consensus Group on Depression and Anxiety)1.8〜3.2%(Schneier FR,et al.:Social Phobia.Comorbidity and Mordibity in an Epidemiological Sample)などがある。
| SAD | 恥ずかしがりの性格 |
|---|---|
| ある決まった状況では常に不安感を覚える | 恥ずかしさを覚えても徐々に慣れる |
| 他の人より、羞恥心や不安感、赤面やふるえ等が強いと自覚している | 他人と比べて恥ずかしさが強い自覚はない |
| 強い不安を覚えると赤面、ふるえ、吐き気等の身体症状が出る | 不安を感じても強い身体症状は表れない |
| 不安に感じる場面に立ち会うのを避けてしまう | 恥ずかしさを覚悟しても、その場に参加できる |
| 日常生活支障をきたしている | 日常生活に大きな影響はない |
社会不安障害(SAD)の患者さんは、あらゆる社交的場面(全般型)や「人前で話す」「電話に出る」「注目を浴びる」などの状況(非全般型)で行動する際に、不安な気持ちやそこから立ち去りたいという強い恐怖感を覚えます。
社会不安障害(SAD)が発生しやすい状況には次のようなものが報告されています。
- 権威ある人と面談する
- 人前での行為や会話
- 知らない人との会話
- 会議で意見を言う
- 試験を受ける
- 誰かを誘おうとする
- パーティーを主催する
- 人前でお腹がなる(なりそうになる)
- 人前でおならが出る(出そうになる)
- 自宅外でトイレへ行かなければならない
社会不安障害(SAD)では、強い不安症状が自律神経に作用し、さまざまな身体症状を発症することがあります。比較的、頻繁に見られる症状は以下のようなものです。
- 顔が赤くほてる
- 脈が速くなり、息苦しくなる
- 汗をかく
- 手足、全身、声の震え
- 吐き気がする
- 口が渇く
- トイレが近くなる、または尿が出なくなる
- めまいがする
- パニック発作








